抄録
中国の南西部茂蘭のカルスト地域において,林外雨,林内雨,樹幹流及び渓流水を採取し,降水の樹冠通過前後の化学組成の変化を明らかにするとともに,主なイオンの収支を把握した。本調査地は,人為的攪乱のない亜熱帯常緑・落葉広葉樹が混交した天然林である。水循環におけるCa^<2+>とMg^<2+>の移動量が多く,カルストの炭酸塩岩の影響が示唆された。中国国内の他の地域に比べ,降雨のイオン濃度が低く,pHが高いという特徴は,人為的な影響よりもカルストの自然条件が大きいと考えられる。また,主なイオンの収支はCaとMgでマイナスとなり,K^+,Na^+,Cl^-,SO_4^<2->-S及び溶存無機態窒素(DIN)はプラスとなった。樹冠収支モデル(Na^+トレーサー)を用い,林内雨中の乾性沈着とイオンの樹冠交換割合を推定した。年間乾性沈着量はCa^<2+>が最も多く,ついでSO_4^<2->,NH_4^+であった。森林に流入したDINは年間12.3kgha^<-1>で,そのうち86%は,植生-土壌生態系への保持が推察され,植生と土壌微生物に効果的に利用されていた。