抄録
ギャップサイズが葉リターの分解速度に与える影響を熱帯雨林(マレーシアのパソ森林保護区)および亜熱帯林(鹿児島県徳之島),暖温帯林(宮崎県綾)でリターバック法により調べた。パソにおいては5種類の葉リターを,徳之島及び綾では優占種2種の葉リターを用いて分解実験を実施した。ギャップサイズは,パソと綾においては,林冠下(0m^2),小ギャップ(<20m^2),中ギャップ(30〜70m^2),大ギャップ(>90m^2)の4段階に,徳之島においては,小ギャップ(<20m^2)を除いた3段階に区分し分解速度を比較した。リターバックについては基本的にメッシュサイズ2mmを使用したが,パソでは,シロアリを含む中・大形分解者の影響を取り除くことのできるメッシュサイズ0.5mmのリターバックも用いた。調査の結果,森林型の違いによってギャップサイズが分解速度に与える影響は異なった。パソと綾においてギャップサイズは分解速度に影響を与えなかったが,徳之島においては大ギャップ(>90m^2)で分解速度が小さくなる傾向がみられた。一方,パソにおける0.5mmメッシュリターバックの実験では,大ギャップ(>90m^2)と中ギャップ(30〜70m^2)で分解速度が遅くなる結果が得られた。これらのことから,熱帯雨林における高等シロアリ等中・大形分解者による分解は,ギャップ形成により環境が変化しても抑制されない可能性があることを指摘した。このことは,各森林帯で分解に大きく貢献している分解者相の違いによりギャップサイズが分解速度に与える影響が異なることを意味する。