2013 年 55 巻 1 号 p. 9-15
山地小流域源頭部からのリター流出は,下流での水質形成や底生動物群集の維持に影響しうる。国内でも多雨地域である南九州地方の太平洋側に位置する常緑広葉樹二次林からなる山地小流域源頭部における流出リターの量と季節変化を把握し,落葉落枝(落下リター)量および渓流水量の季節性との関係を明らかにすることを目的として, 3年4ヶ月間にわたり面積0.67haの一次谷から流出するリターの全量を測定した。流出リター量の3年間の平均値は23.4kg ha^<-l>y^<-1>であり,このうち流出枝が約4分の3を占めていた。流出葉量は年変動が大きかったのに対して流出枝量のそれは小さかった。落下リター量に対する流出リター量の比の3年間の平均値は0.45%であった。流出リター量は常緑広葉樹の落葉期である3月から5月ではなく,梅雨以降の多雨の半年間に多く年間流出量の7割以上が発生していた。リターの流出は供給としての落下リター量よりも掃流力である渓流水量により依存していたと考えられる。