切り捨て間伐は,空中リターを発生させるが,それらは地表リターと比べて分解速度が遅いことが知られている。したがって,発生したリターの垂直位置ごとの量は間伐林分の物質循環を理解するうえで重要である。空中及び地表リターの分解過程及び空中リターの地表への落下はリターの残存量や垂直分布の動態を決定するが,それらは気象要因に影響されると考える。そこで,本研究では,気象要因が空中リターの落下とリターの分解に及ぼす影響をベイズモデルによって明らかにし,それらを関連付けてリターの残存量の変動を推定した。スギ針葉リターについて,間伐後42ヶ月にわたり空中リターの落下と空中と地表におけるリターの分解速度を測定した。測定結果に基づいて構築したベイズモデルから,分解速度に対しては気温が,空中リターの落下速度に対しては降水量が時間変動の決定要因であり,各要因はそれぞれの速度に正に作用することを指摘した。落下速度と分解速度を関連付けたリター残存量の動態モデルから,空中リターの落下が42ヶ月間のリターの残存量に与える影響はわずかであるが,垂直分布には大きく影響すること,気温や降水量等の気象要因は42ヶ月間のリターの残存量と垂直分布の動態の両方に大きく影響することを明らかにした。これらの結果は,本研究で提示したモデルが,温帯林の切り捨て間伐林分における物質循環の理解に寄与する有効なツールになることを示している。