森林立地
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論文
西大台ケ原のヒノキ天然林分布に関係する土壌など立地環境の影響
松井 直弘小野 由紀子城向 光弥石山 麻子森田 哲朗麻生 泉菅沼 孝之
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2018 年 60 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

現在日本各地に残るヒノキ天然林は,ヒノキが良材として古くから伐採されてきた経緯もあり,伐採,搬出の困難な急傾斜地などに限定されている。本研究ではヒノキ天然林の好適な立地環境を解明するため,植生学的には本来ならブナ林が優占するとされる西大台緩斜面地の約60 haのヒノキ天然林で,ヒノキ優占林36地点とブナ優占林20地点の土壌特性について,特に土層深,土壌硬度など土壌物理性に着目して調べた。その結果,ヒノキ天然林の分布を規定しているのが土層深,土壌硬度などの土壌物理性であることが示された。ヒノキ林,ブナ林が出現する割合は土層深50 cmが閾値となり,50 cm以上ある場合には均衡していたが,50 cm以下の場合,ヒノキ林の出現する割合は84.2%と,ブナ林の出現する割合15.8%を大きく上回った。またヒノキの植被率と2,000 kPaの圧密土壌が出現する深さとの間には関係が見られず,ヒノキは土層深50 cm以下の土壌が薄い立地環境でも成立していた。これはヒノキが根を水平に伸ばすなど圧密層の影響を受けにくい根系を保持しているためと考えられた。一方でヒノキ林の植被率は仮比重が低いほど高くなっていた。ヒノキには土層深が深く,土壌が孔隙に富むなど土壌物理性が良好であることがより望ましい生育環境であること,またそうした立地では分布の拡大をめぐってヒノキとブナの競合が生じている可能性が示された。

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© 2018 森林立地学会
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