人工林の広葉樹林化により植物の多様性がどのように変化したかについて,検証を行うことを目的に以下の研究を行った。暖温帯域の針葉樹人工林が気象害を受けてから広葉樹二次林として自然再生していった林分について,再生0年目から30年目までの植物種数や種構成の長期経年変化について検討した。全体の種数は,気象害を受けた直後の3年間は急増したが,以降は減少し続けた。次に,種構成の経年変化を出現種の生態的特徴から分析するために,出現種を生育環境区分によってタイプ分けし分析した。照葉樹林タイプの種数は,調査期間を通じて増加した。一方,草原タイプなど非森林生の種数は再生初期に増加し,その後減少した。この結果,人工林跡から成立した広葉樹二次林は,攪乱後再生初期では非森林生の種の一時的な増加によって全体の種数が多くなるが,その後は減少していくことが示された。人工林跡から成立した広葉樹二次林の多様性が,攪乱によって増加した非森林生の種に大きく影響されることは,多様性保全を目的とした森林管理で考慮する必要があると考えられた。