森林立地
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61 巻, 1 号
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論文
  • 井上 華央, 柴田 英昭, 吉田 俊也, 中路 達郎, 小花和 宏之, 加藤 顕
    2019 年 61 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    森林生態系における窒素循環の空間分布を理解するためには,葉の窒素含有量の空間分布を把握することが重要である。本研究では,デジタルカメラを搭載した小型無人航空機(UAV)を用いて高解像度の空中写真を異なる季節で撮影し,そのRGB指標値と連続写真から三次元データを作成するStructure from Motion(SfM)を併用することで,樹種構成や林冠構造が不均質な森林における上層木および下層植生(ササ)の植被表面における葉の窒素含有量の空間分布を推定する手法を開発した。研究は北海道北部に位置する北海道大学雨龍研究林内の天然生針広混交林で行った。まず,優占樹種8種(常緑針葉樹2種,落葉広葉樹6種)と下層植生のササの葉を近接撮影し,RGB指標値と葉の窒素濃度の関係を調べた。針葉樹,広葉樹(+ササ)の窒素濃度とRGB指標値の間にそれぞれ有意な相関関係があった。次に,UAV撮影画像のSfM解析によって林冠表層高と地盤高との差分として林冠高を推定した。着葉期と落葉期の林冠表層高の差分と落葉・常緑の指標を用いて,常緑針葉樹,落葉広葉樹,ササの空間分布図を作成する手法を構築した。作成した植生分類図にRGB指標値と窒素の関係式を植生ごとに適用し,流域スケールでの窒素の空間分布を推定した。本研究で開発した手法を発展させることにより,これまで不可能であった森林生態系における窒素循環の空間動態の可視化・地図化が可能となるであろう。

    Editor's pick

  • 小川 秀樹, 横田 かほり, 新井 志緒, 櫻井 哲史, 吉田 博久
    2019 年 61 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    東京電力福島第一原子力発電所事故由来の137Csによるスギ(Cryptomeria japonica)樹皮の垂直方向の137Cs濃度分布を2012年に福島県内の複数地域で調査した。空間線量率が異なる福島県内の7箇所の森林で合計12本のスギ成木を伐倒し,高さ別に樹皮サンプルを採取して,樹皮あるいは外樹皮および内樹皮の乾燥重量あたりの137Cs濃度をNaI検出器を用いて測定した。各調査木の樹皮137Cs濃度の垂直分布を,地表面に最も近い高さの濃度を基準として指数化し,さらに各立木の先端からの距離を基準として調査木間で比較した。その結果,スギ樹皮の137Cs濃度分布には根元の高さから立木先端に向かって濃度が増加する傾向が認められた。また,内樹皮の137Cs濃度は垂直方向でほぼ一定の値となる傾向にあり,さらに,樹皮に含まれる137Csのほとんどが外樹皮に分布していた。以上の結果から,汚染度が異なる森林で生育し,また樹高の異なる立木であっても,2012年のスギには立木先端に向かって樹皮表面の137Cs汚染が上昇する共通の傾向があることが明らかとなった。

  • 大貫 靖浩, 古堅 公, 生沢 均, 松浦 俊也, 山下 尚之, 新垣 拓也
    2019 年 61 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    沖縄本島最北部において,皆伐が大きい影響を及ぼすと考えられる表層土砂移動に焦点を当てて,皆伐区と隣接する対照区で土砂受箱を用いた土砂移動量測定を2014年から2015年の1年間にわたり実施し,斜面傾斜や林床被覆率との関係について明らかにした。皆伐区と対照区の土砂移動量の季節変化を検討した結果,梅雨,台風,冬季の降雨のそれぞれの影響は台風の襲来が平年よりも少なかったこともあり,冬季 < 台風 < 梅雨の順に大きかったが,皆伐区で重機による林床攪乱が大きかったプロット内では台風の降雨後に高い値を示した。また対照区内であっても,傾斜の急なプロットにおいては,土砂移動量は多かった。一方,土砂受箱周辺が下層植生でほぼ覆われている皆伐区のプロットでは,降水量の多寡にかかわらず対照区の傾斜の緩やかなプロットと同程度の小さい値を示した。土砂移動量と斜面傾斜・林床被覆率・表層土層厚との関係を検討した結果,林床被覆率が100%に近ければ,下層植生は土砂流出を止める大きな効果があるが,林床被覆率が50%程度またはそれ未満の場合,土砂移動量は傾斜と表層土層厚に大きく規定されることがわかった。

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