日本森林学会誌
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総説
スギ赤枯病研究の現状と課題
安藤 裕萌 升屋 勇人
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キーワード: スギ, 苗木, 赤枯病, 診断, 防除
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2020 年 102 巻 1 号 p. 44-53

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抄録

スギ苗木の重大かつ代表的な病害の一つにスギ赤枯病がある。本病は,Passalora sequoiaeによって引き起こされる病害で,1900 年代初頭と1950 年前後の拡大造林期の2度に渡って大流行し,一時はスギの苗木生産に壊滅的な被害をもたらした。現在では,本病による被害はほとんど耳にしないほどにまで収まっているが,決して過去の病害ではなく,適切な防除を怠れば,現在でもスギ苗木において被害を引き起こす。ただし,赤枯病に対する正確な知識があれば,本病による被害は殆ど完全に防除することができるのも事実である。再造林施業に向けたスギ苗木の増産に伴い,病害虫の被害,特に赤枯病の蔓延が危惧されている。ここ数年の間に,既に複数の地域で赤枯病の被害が発生し,低コスト再造林の切り札として注目されているコンテナ苗においても同様に,本病の被害が生じる可能性がある。本稿では,今後,再び被害が懸念される本病について,これまでの知見を取りまとめ,本病の理解を深める一助とするとともに,今後の課題について整理した。

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© 2020 一般社団法人 日本森林学会
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