2020 年 102 巻 1 号 p. 69-76
自然体験活動の有効性が様々な研究において論じられてきたが,本研究では森林環境における自然体験活動が参加した子どもたちの生きる力と自然との共生観に及ぼす影響を検証した。また,参加者のもつ特性に着目し,元々の自然体験の経験の多寡という視点と自然の営みにより心身に大きな損傷を受けるような自然災害というネガティブな経験をした子どもたちへのプログラム効果を検証することとした。分析対象者はふくしまキッズプログラムに参加した子どものうち有効回答が得られた213名とその保護者であった。参加者には,生きる力,自然との共生観,自然体験の経験を問う項目,保護者には,被災時の経験等を問う項目でそれぞれ質問紙調査を行った。自然との共生観について,自然への親和性,自然と生命の関係性,自然への興味と配慮の3因子構造が認められた。参加者全体において,プログラムによる生きる力および自然との共生観の向上効果が実証された。参加者のうち自然体験の経験が少ない子どもは,多い子どもよりもプログラムによる向上効果がみられた。また震災による恐怖体験の有無は身体的能力の変容に影響を与えることが明らかとなった。