日本森林学会誌
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論文
千本山林木遺伝資源保存林におけるヤナセスギの稚樹と中小径木の生育環境
藤山 美薫五十嵐 秀一市栄 智明
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2020 年 102 巻 4 号 p. 239-243

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抄録

高知県の千本山林木遺伝資源保存林において,ヤナセスギの天然更新に必要な条件を明らかにするため,林内に生育する稚樹や中小径木の生育環境を調べた。ヤナセスギの稚樹(胸高直径1 cm未満)の樹高,地際直径,開空率,土壌含水率,および中小径木(胸高直径1 cm以上40 cm未満)の樹高,樹冠直上の開空率,肥大成長量,土壌含水率,隣接木との競争関係(立木周辺の他の樹木の胸高断面積合計密度)について調査を行った。調査した全ての稚樹が倒木上に出現し,その98.6%が開空率12%以下の光環境に生育していた。一方で,中小径木では開空率12%以上に89.3%の個体が生育していた。また,中小径木の最近5年間の相対成長率は,開空率と有意な正の関係性を示したが,他の環境要因とは明瞭な関係がみられなかった。そのため,千本山林木遺伝資源保存林のヤナセスギの更新には最低でも開空率12%以上の光環境が必要であり,生残している稚樹でも中小径木クラスへの更新はほとんど期待できないことがわかった。

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© 2020 一般社団法人 日本森林学会
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