2020 年 102 巻 4 号 p. 244-253
本研究は,中国の管理モウソウチク林における維持管理・生産および林分構造の現状と課題を明らかにすることを目的とした。江蘇省宜興市を調査地として56の竹林管理主体に対する聞き取り調査と管理竹林での林分調査を実施した。その結果,原竹とタケノコの両方を得ることを目的として,竹林で定期的な粗放管理が行われており,管理主体によって竹林での施業と林分構造に差異があった。林分調査からは粗放管理によって,平均稈密度は4,348本/ha,平均DBHは9.6cm,胸高断面積合計は30.38m2/haであり,稈は一様分布していることが明らかとなった。さらに,稈密度が高くなるにつれて,DBHと新竹率は減少し,稈が集中またはランダム分布に近くなる等,林分指標間の関係も示された。今後,管理者の高齢化と管理コストの上昇により一部の立地条件の悪い竹林では管理が放棄され,比較的良好な立地条件にあり管理コストの低い竹林だけで管理の維持が可能となることが示唆された。持続性を担保できる竹林資源管理・利用の方策を策定する際には,竹林管理主体間の管理方法の差異および竹林施業と林分構造間の関係を理解する必要があると考えられた。