日本森林学会誌
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論文
刈り払い機による人力かき起こしとルートカッターによるササ地下茎の切断が天然更新に及ぼす効果
坂井 励 吉田 俊也
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2020 年 102 巻 5 号 p. 300-305

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抄録

天然更新を用いて低コストで森林を造成する手法として,更新の阻害要因であるササ類を重機で剥ぎ取る,かき起こしの有効性が確かめられてきた。しかし急傾斜地など重機の使用が制限される立地での天然更新技術は未だ確立されていない。そこで本研究では,まず刈り払い機を用いてササの地上部を除去するとともに,A0層を攪乱し天然更新を促す方法(刈り払い機かき起こし)を試みた。更に施工地内のササの回復を抑制させることを目的として,施工地周縁のササの地下茎をルートカッターで切断し,地下茎による施工地外との繋がりを遮断する作業(地下茎切断処理)の効果も検証した。刈り払い機かき起こしは高木性稚樹の発生数を高めていた。また,地下茎切断処理は施工3年後におけるササの成長を半分程度に抑制し,高木性稚樹の生存率を有意に高めていた。刈り払い機かき起こしは通常の植栽仕様の人力地拵えに38%,地下茎切断処理は更に24%のコストの上乗せで実行できた。刈り払い機による地表攪乱の実用化のためには安全性を確保しうる機器の開発が必要であるが,本研究の結果は,ササ型林床を持つ無立木地の更新作業について新しいオプションの可能性を示すものである。

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© 2020 一般社団法人 日本森林学会
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