日本森林学会誌
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総説
人工林における外来種植栽の現状と課題―針葉樹を中心に―
長池 卓男
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 103 巻 4 号 p. 297-310

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抄録

人工林における針葉樹外来種植栽についての現状や課題をまとめた。自生種よりも成長の良い外来種や,市場で優位的な販売性を持っている外来種などが植栽されており,気候変動に適応できる種として外来種が選択されていることもある。一方,植栽地以外への定着・拡散が確認され,地域の植生や生物相,水文や養分循環などに負の影響を及ぼしている例もある。外来種を植栽した後に侵略性が顕在化した際,その対策にはコストが非常にかかっている。外来種を導入する可否を判定するツールが開発されているが,侵略性の評価に加え,土壌や水文への影響,食植者耐性などを含めた評価が必要とされる。また,外来種は,それ自体に対する考え方やノベル・エコシステムの中での位置づけに議論が起こっている。外来種であるコウヨウザンの日本での植栽が開始されているが,原産地の中国では更新の失敗と生産性低下が課題とされており,それは根などからの他感物質が原因の一つであるとされる。人工林にどのような樹種を植栽するかは木材生産機能のみならず公益的機能に少なからず影響するため,様々な機能の面から事前の検討と影響の予測が必要であろう。

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© 2021 一般社団法人 日本森林学会

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