2021 年 103 巻 4 号 p. 291-296
森林の樹木の枯死率は光合成を行う葉の量および分解される有機物の量を決定するため,森林生態系の炭素収支を扱う上で重要な値に位置づけられるが,現存量から計算した枯死率のデータは少ない。本研究では,20世紀初頭に成立したシラカンバを主体とした森林からミズナラ等遷移中後期樹種に変化しつつある森林における枯死率の変化を整理した。2004年の台風撹乱後,高い枯死率が継続した。また,被害の程度によって台風後数年間の枯死率に差が生じた。現存量から計算した枯死率は,多くの期間で個体数から求めた枯死率と同等か低かった。一方,台風などの撹乱や,林冠構成木の衰退に伴う大きな個体の枯死が大量に発生した場合は,現存量から計算した枯死率が個体数から求めた枯死率より高くなることがわかった。