2022 年 104 巻 4 号 p. 187-192
マツノマダラカミキリ幼虫駆除のための伐倒くん蒸処理では,処理期間を通じて被覆内で一定濃度のMITCガスを維持する必要があり,不完全な密閉などの要因によるMITC濃度の低下は殺虫率に影響を及ぼす。本研究では,MITC濃度の低下要因およびMITC濃度と殺虫効果との関係を解明するために,秋季と冬季に全面被覆式および密閉度やくん蒸剤散布方法を違えた上面被覆式によるくん蒸処理を行った。そして,処理期間を通じたMITC濃度の変化を追跡し,処理丸太内の本種幼虫の死亡率を調査した。秋処理でのMITC濃度変化は,全ての被覆方式・密閉タイプで同じ傾向を示した。冬処理ではMITC濃度が秋処理に比べて全般に低下し,上面被覆で裾の固定をルーズにするとさらに低下した。また,上面被覆で標準的な被覆を行っても,くん蒸剤を集積山の上面全体ではなく中央に集中的に散布すると濃度が著しく低下する場合があった。本研究では,濃度の低下は本種幼虫の死亡率には影響しなかった。しかし,マツ材線虫病防除に必要な高い殺虫率を常に得るには,厳寒期のルーズな被覆やくん蒸剤集中散布などのMITC濃度の低下要因を避けることが望ましい。