2023 年 105 巻 4 号 p. 129-135
スギ人工林内に試験プロットを設け,3本のスギにおいて樹幹近くの樹冠通過雨量を小型ビニールプールを幹周りに固定して計測した。この量と,一般的に樹冠通過雨として計測される10個の貯留雨量計で測定した樹冠通過雨量の指標値との比較を行った。測定対象とした3本のスギでは,降雨中の林外雨,樹冠通過雨,樹幹流の観測結果から,樹冠の枝幹で雨水が集水され樹幹流となる過程において,樹木ごとに集水プロセスと樹幹から離脱して滴下雨となる確率が異なることが示された。樹幹近くの樹冠通過雨量は,年間合計量としては樹冠通過雨量指標値と同程度の量となるが,小降雨イベント時には樹冠通過雨量指標値よりも少なく,大降雨時には多くなる事例もあり,樹冠通過雨量指標値の2倍の量を記録することも観測された。このため,豪雨時において樹幹近くの樹冠通過雨成分を無視した場合,樹冠通過雨量を過小評価する可能性があることを示した。