日本森林学会誌
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論文
スギ植栽木に対するススキ型および落葉広葉樹型競合植生の被圧効果の違い
原谷 日菜伊藤 哲 中山 葉月山岸 極山川 博美溝口 拓朗平田 令子
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電子付録

2023 年 105 巻 5 号 p. 147-153

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抄録

スギ植栽木に対する異なる競合植生による被圧効果の違いを光の制限と樹冠発達の抑制の二つの側面から明らかにすることを目的として,ススキが優占する林地と落葉広葉樹が優占する林地に植栽されたスギ苗の3年間の成長と4年目のスギの枝量を調査し,植生タイプ間で比較を行った。樹高と地際直径の成長量を目的変数とした一般化線形混合モデル(GLMM)による解析の結果,植栽木の樹冠上部が被圧されない競合状態(競合植物の高さが植栽木の樹高未満)における植栽木の成長が,ススキ型では落葉広葉樹型に比べて顕著に劣っていた。また,高さ61~100 cmの範囲のスギ植栽木の枝量はススキ型で少なかった。以上の結果から,ススキ型では着葉量の多いスギ樹冠下部をススキの密な葉でより強く被圧し光を制限することに加え,葉の物理的な接触によってスギの樹冠発達を抑制する効果も落葉広葉樹型に比べて強いと推察された。ススキ型のこのような被圧の効果が,落葉広葉樹よりも顕著なスギ植栽木の成長低下を生じさせていると考えられることから,ススキ型においては植栽木樹冠下部への被圧や枝の発達抑制を考慮した下刈り省略の判断が必要であることが示唆された。

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© 2023 一般社団法人 日本森林学会

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