日本森林学会誌
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短報
飲料用ペットボトルを再利用した絶滅危惧種オガサワラグワの培養苗の馴化
遠藤 圭太 織部 雄一朗 北山 朋裕村田 崇真吉井 嘉子横谷 みどり花岡 創松下 通也長谷部 辰高玉城 聡倉本 哲嗣山田 浩雄
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2024 年 106 巻 1 号 p. 7-12

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抄録

絶滅危惧種であるオガサワラグワ(Morus boninensis)の保全のために,苗木生産を効率化するための組織培養苗の馴化技術として,使用済みの飲料用ペットボトルを再利用した「PB馴化法」を開発した。林木育種センター(茨城県日立市)の研究施設で組織培養によってオガサワラグワのクローン苗を作製し,自生地である東京都小笠原村の父島と母島に輸送した。島内の温室や事務室でPB馴化法によって培養苗の馴化試験を行った結果,66.7~100%の高い生存率で培養苗の馴化に成功した。PB馴化法の開発により,馴化の過程で多くの苗が枯死するという問題が解決し,培養植物を扱うための設備等が充実していなかった島内の施設でも,効率的にクローン苗を保存できるようになった。入手の容易な使用済みペットボトルから馴化のための道具が作製可能であり,PB馴化法は,オガサワラグワの保全を今後も継続するための重要な技術である。

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© 2024 一般社団法人 日本森林学会

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