ヤチダモは,広葉樹の代表的な植栽樹種として早い時代から造林が行われ,高齢級の林分が存在する。本研究では,1924年に植栽され,その後56年生時まで本格的な間伐が行われなかった林分を対象に,直近40年間(56~96年生時)の変化を記述し,ヤチダモ個体のその間の直径成長に影響を与えた要因を明らかにした。96年生時におけるヤチダモの蓄積は190 m3/ha,平均胸高直径は36.9 cmで,林分は主伐が可能な状況に達していた。立木個体の直径成長に対しては,胸高断面積(個体サイズ)および樹冠長率の有意な正の効果が一貫して示された。隣接する立木個体から受ける競争効果は認められなかった。林分をより早く主伐期に到達させるためには,樹高の3分の2程度に達する平均樹冠長率を確保するための間伐が初期に必要と考えられた。一方で,林分の長伐期化をめざすうえでは,とくに大径の立木個体において幹の凍裂が頻出することが懸念された。