2024 年 106 巻 11 号 p. 295-298
近年の国産漆の需要急増への対応には,ウルシ林の造成や,苗木の増産が必要である。ウルシの種子は休眠性を有し,発芽率が低い。休眠打破処理を行っても,発芽率はばらつき,原因の一つとして,シイナ等の不良種子の混入が想定される。不良種子の除去には塩水による比重選が用いられるが,溶質の比重を高めることで,選別率が向上する可能性がある。そこで本研究では,ウルシ種子の比重選における選別率の向上を目的として,ショ糖を溶質に用いて選別した。その結果,食塩の飽和溶液を超えるショ糖濃度でも沈降種子率は減少し,塩水選では除去できない不良種子を除けることが示唆された。さらに,選別後のウルシ種子の発芽率は,ショ糖濃度に応じて増大した。発芽率の増大は,飽和食塩水を超える比重のショ糖水溶液にて沈降した種子でも見られたことから,飽和食塩水の沈降種子には,不良種子が含まれることが示唆された。