寒冷地でのクロマツ種子の生産事業で合成サイトカイニン・BAPによる雌花着生促進技術を実用するため,青森県の採種園において3種類の方法(冬芽へのペースト剤塗布,液剤の枝注入と樹幹注入)でBAP処理を実施し,処理方法,処理時期(2013年9月5,13,20,27日と10月4日)と処理クローン(5種類)による効果の違いと各処理方法の所要時間を調べ,採種園での施用に最適な処理方法については,種苗の増産効果を試算した。いずれの処理方法でも雄花群に雌花が誘導され,その効果は,処理方法(ペースト剤塗布より枝注入で高く,樹幹注入で低い,P<0.05),処理時期(9月中・下旬で高く,その前後は低い,P<0.001)と処理クローンにより異なった。所要時間は樹幹注入が最短でペースト剤塗布と枝注入に差はなかったが,採種園での施用に最適な処理方法としては,雌花着生促進効果を重視して枝注入を選んだ。BAP処理で得られた種子の充実率と発芽率は,通常の種子の65%程度であった。枝注入では,雄花群1個当たり3.8個の球果と40本の苗木が,一次枝5本に処理した採種木1個体当たり通常の5.8倍の苗木が得られると試算された。