国産漆の需要が高まっているが,ウルシ林からの漆液収量の最大化を目標とした造成・管理方法に関する研究はほとんどない。現在,ウルシ主産地の岩手県二戸市では原木本数で管理されているものの,単木の漆液収量は幹直径に依存するため,直径サイズのばらつきを考慮して管理する必要がある。また,密度効果によって本数が減少することも考慮する必要がある。本研究では,岩手県北部および青森県南部のウルシ林49林分のデータを用いて,Y-N理論に基づき直径サイズ分布予測モデルを構築した。このとき,Y-N曲線のパラメータA,B,ならびに植栽後のウルシ個体の残存率は上層高の関数と仮定し,さらにこの関数に植栽密度や地位指数が影響する可能性があると仮定した。地位指数は,林齢と上層高の関係から地位指数曲線を作成して求めた。予測されたサイズ分布に対し,ウルシ1本当たりのサイズ別漆液収量に関する先行研究のデータを代入することで林分当たりの漆液収量を推定した。植栽密度と地位指数を変えてシミュレーションを行い,植栽密度や地位指数,漆搔きをする適当な林齢について検討した。