日本森林学会誌
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論文
ブナ二次林における小面積の群状択伐による環境変化がオサムシ科甲虫群集に及ぼす影響
清水 達哉 箕口 秀夫
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2024 年 106 巻 9 号 p. 271-278

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抄録

ブナ二次林における「林冠ギャップ」を模した0.04 ha未満の小面積の群状択伐がオサムシ科甲虫群集に及ぼす影響を評価するために,ブナ択伐箇所,ブナ択伐箇所に隣接したブナ保残箇所,ブナ二次林,およびスギ人工林の四つの調査サイトで択伐前後の環境要因とピットフォールトラップ法によるオサムシ科甲虫の捕獲調査を行った。その結果,択伐により土壌水分率や土壌温度などの林内環境は変化し,オサムシ科甲虫群集については,択伐翌年はブナ択伐箇所とブナ保残箇所でケゴモクムシが多く捕獲された。また,アトボシアオゴミムシとコゴモクムシの2種はブナ択伐箇所のみで捕獲された。このため,これら3種は択伐後の環境変化に敏感に反応し,その環境に速やかに侵入する種であること,また,択伐は施業を行った場所だけでなく,隣接林の捕獲種数と捕獲個体数を増加させることが示唆された。一方で,択伐後,顕著に捕獲個体数が減少した種はなかった。NMDSの結果,ブナ林の三つの調査サイトは重なって描画された。以上のことから,ブナ二次林における小面積の群状択伐は,オサムシ科甲虫群集を保全,維持するうえで有効な施業方法であると考えられる。

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