関東平野では,ナラ枯れの防除対策を適切な時期に実施する際に必要となるカシノナガキクイムシ成虫の発生消長に関する知見が不足している。本研究では,関東平野北部の栃木県足利市のナラ枯れ被害林分に,2022年3月から12月にかけて衝突板トラップを設置して飛翔成虫数を調べるとともに,コナラとフモトミズナラの合計5本の穿入生存木の穿孔に脱出トラップを設置して脱出成虫数を調べた。その結果,飛翔は5月13日から11月末まで長期にわたってみられた。一方,連続的な脱出は6月24日に開始し,脱出成虫数も多かったが,9月以降はほとんどみられなくなった。このように本調査地では,飛翔開始日や連続的な脱出開始日と調査地の気温を基に推定した初発日(5月26日)にずれがみられた。また,9月以降は飛翔成虫数にピークがみられた一方で,脱出はほとんどみられなくなるという部分二化性の可能性が示唆される現象がみられた。