日本森林学会誌
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論文
ヤマガラによる貯蔵散布がエゴノキ種子の発芽に及ぼす影響
村上 智美林田 光祐荻山 紘一
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2006 年 88 巻 3 号 p. 174-180

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抄録

サポニンを含む果皮とそれを除去するヤマガラの貯蔵行動がエゴノキ種子の発芽に及ぼす影響を明らかにするため, エゴノキの種子散布と発芽特性を東北地方の落葉広葉樹林で調べた。成熟果実は9月までにすべて樹上から消失した。4日間の観察期間中ヤマガラのみがエゴノキに飛来し, そのうちの80%で果実を運搬する行動がみられた。樹上からなくなった果実のうち, 83.0~87.2%が樹冠外に持ち出されたことから, 樹上果実の大半はヤマガラによって運搬されたと考えられる。残りの果実は自然落下したが, これらの果皮は11月中旬まで分解されずに残った。野外での発芽実験では, 果皮を除去した種子は36%の平均発芽率がみられたが, 果実は4%とわずかで, 種子の発芽率が有意に高かった。果皮に含まれるサポニンの量は果実が落下すると急激に減少することからサポニンが発芽を抑制しているとは考えにくい。ヤマガラの貯蔵行動は発芽阻害の原因となる果皮を除去するという行為を伴うので, エゴノキの種子を散布させるだけでなく, 発芽にも大きく貢献していると考えられる。

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© 2006 一般社団法人 日本森林学会
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