日本森林学会誌
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論文
ガラス室内スギミニチュア採種園の特徴とその有効性
斎藤 真己平 英彰
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2006 年 88 巻 3 号 p. 187-191

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抄録

スギ採種園における園外からの花粉汚染対策として, 閉鎖したガラス室内にミニチュア採種園を造成し, その得失と有効性を検討した。ガラス室内のスギの開花時期は, 雄花が2月4日から3月27日であり, 雌花は2月5日から3月22日であった。これに対して, 野外のスギ花粉飛散は2月21日から4月6日であったことから開花時期はガラス室内の方が野外より3週間程度早かった。室内の80%以上の個体が開花した時期は, 雄花が2月17日から3月13日までで, 雌花が2月15日から3月3日までであり, その期間はほぼ完全に重複していた。この採種園から得られた種子の発芽率は21.4%であり, 従来型の採種園から得られた自然交配種子のそれと同程度であった。以上のことから, ガラス室内ミニチュア採種園を利用することで園外からの花粉汚染を防ぎ, さらに雌雄の開花期が揃うことから確実な交配が行われると期待される。今後のスギ造林は多品種を少量面積で植栽する方向に向かうと予想されることから, このことを実現する上においても, 本手法は有効な手段になると考えられた。

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© 2006 一般社団法人 日本森林学会
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