2006 年 88 巻 6 号 p. 534-540
関東平野北西部における森林からの渓流水の窒素流出の地域分布特性を把握するため, 群馬県内に調査地を設定し, 継続的な観測を行った。これによって, 窒素流出の地域分布特性が, 概ね利根川を境とするその東西部で異なることが示され, 西部では東部で示されない高濃度の渓流水中NO3-Nが観測された。この傾向は土壌抽出水中NO3-N濃度でもみられた。また, 降水量と渓流水中NO3-N濃度との相関傾向では, 利根川東部では西部よりも高い正の相関を示した。これらのことから, 利根川以西において窒素飽和の状態が示されていることが考えられ, その要因として首都地域からこの地域に輸送される大気汚染物質の影響が考えられる。