水際からの比高に応じて異なる砂礫堆の浸水時間と基質の粒径組成がネコヤナギ実生の成長に及ぼす影響を解明するために,当年生実生の樹高,根の深さ,乾重,地上部と地下部の乾重比を宮川沿いの砂礫堆における複数の比高間で比較した。浸水時間が生育期間の半分以上を占めた低い比高の実生の乾重が小さかったことは,長い浸水時間が実生の成長を抑制することを示唆する。出水時の撹乱もまた低比高の実生の成長を抑制していた。浸水時間が数日間だけで短かった高い比高の実生は,高い樹高,深い根の深さ,重い乾重,低いTR率(地上部/地下部)を示した。高比高の基質は,細かな粒径の砂が占める割合が低比高の基質よりも高かったことから,保水性が高いと考えられる。高い比高の実生は,低い比高の実生よりも地下部への資源配分割合が大きいこととより深い根を持つため,基質の水分不足に耐えることができると推察された。比高ごとに異なる浸水時間,基質の粒径組成および撹乱は,ネコヤナギ実生の成長に影響すると推定された。