日本森林学会誌
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論文
吸収源CDM推進の方向性
—フィジー国ナンロガ州ロマワイ村の再植林事業事例からの提言—
福嶋 崇中嶋 真美
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2008 年 90 巻 3 号 p. 166-173

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抄録
吸収源CDMは新規植林,再植林を対象としており,大きなインフラをもたない最貧国や小島嶼国などにおいても実施可能な制度として期待されている。本稿では小島嶼国の一つ,フィジー農村部におけるマングローブを対象とした小規模吸収源CDM事業を事例として取り上げ,関係諸アクターの動向の分析を通じ,吸収源CDM事業の特性を総合的に評価し,推進の方向性を検討することを目的とした。この結果,クレジット収入や伝統文化の保全など地域にとってさまざまな利点を有する吸収源CDMは,不確実性の高さ,採算性の低さといった特に事業者側にとっての問題により,現行ルールにおける事業の推進には限界があることがわかった。しかし,フィジーのような小島嶼国は海水面上昇の影響に非常に脆弱であることから,これらの地域における吸収源CDM事業は,衡平性の観点からも緩和策のみならず適応策として可及的速やかに実施,推進される必要がある。将来枠組みにおいてはセクター別CDMを適用し,「開発」などの吸収源CDM固有の利点をより適切に評価し,事業実施のインセンティブの向上により事業の推進を図ることが望まれる。
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© 2008 一般社団法人 日本森林学会
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