日本森林学会誌
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論文
ラタン, ゴム, アブラヤシに対する焼畑民の選好
—インドネシア・東カリマンタン州ベシ村を事例として—
寺内 大左説田 巧井上 真
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2010 年 92 巻 5 号 p. 247-254

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抄録
ラタン, ゴム, アブラヤシは熱帯地域原産の生産物であり, 先行研究ではもっぱら生態的, 経済的側面が分析されてきた。本研究はラタン, ゴム, アブラヤシを焼畑民の視点から比較し, 彼らの認識と生計戦略を明らかにすることを目的とする。ラタンとゴムを比較すると「労働に対する収益性」の高さからゴム生産が現金収入源として選択されつつも, 利用用途の多さなどの「融通性」の高さからラタン生産も維持されていた。ラタン・ゴムとアブラヤシを比較すると, アブラヤシ生産は「融通性」と「自律性」の低さが懸念される一方で, 「労働に対する収益性」に期待が寄せられていた。そのため, アブラヤシ農園開発は村上流の未利用地では受容されるが, 村周辺の慣習的私的所有地では拒否された。村人は, ラタン, ゴムの長短所を組み合わせ, リスクを回避しながらアブラヤシを導入するという「寄木細工」生計戦略を採っていたのである。
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© 2010 一般社団法人 日本森林学会
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