栃木県奥日光地域では, ミミズ類の現存量は防鹿柵内のササ型林床よりも柵外のシロヨメナ型林床において多いことが報告されている。本研究では, 柵外のミミズ類の増加要因について明らかにするために, ササとシロヨメナの地上部現存量とミミズ類との関係について調査を行った。表層性のミミズ類の個体数および現存量とシロヨメナの現存量との間には有意な正の相関が認められ, シロヨメナの現存量が増加してもA
0層の深さの増加はみられなかった。これらのことと, 表層性のミミズ類は表層でリターを摂食することが報告されていることから, 表層種にとってのシロヨメナの嗜好性は高いと考えられる。一方, ササ型林床では, 1コドラートで1個体が採集されたのみで, ササの現存量が増加するにつれてA
0層の深さは有意に増加した。これらの結果は, 表層種にとってササは餌資源として不適である可能性を示唆する。奥日光地域の柵外では, シカの食害によりササ類が全面枯死し, いまではシロヨメナが群生している。以上のことから, 本地域の柵外におけるミミズ類増加の主要因は, シカによりササ類が消失し, シロヨメナが増加したことであると結論した。
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