日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
総説
きのことキノコバエと線虫の三者関係
津田 格
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 94 巻 6 号 p. 307-315

詳細
抄録

Iotonchium属線虫は担子菌類の子実体 (きのこ) を利用する線虫の一群である。その生活史には子実体を利用する菌食世代とキノコバエ科昆虫に寄生する昆虫寄生世代が存在する。本属の線虫はこれまでに全世界で 11種が報告されているが, その生活史の詳細が明らかになっているものは5種のみであり, そのうちの4種が日本国内から報告されている。Iotonchium ungulatumはヒラタケ白こぶ病の病原体であり, ヒラタケ属菌の子実体のひだに線虫えいを生じさせることで知られているが, それ以外の線虫では宿主菌の子実体に線虫えいを生じさせることはなく, その子実体組織内に棲息する。Iotonchium属線虫はキノコバエ科昆虫と密接な関係を持っていると考えられ, その近縁種と思われる化石種がキノコバエ化石とともに琥珀内から発見されている。本稿ではこれらの生物群が関与する三者間相互関係について詳述するとともに, その進化的関係や今後の研究の課題についても議論する。

著者関連情報
© 2012 一般社団法人 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top