日本森林学会誌
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論文
バルク DNA を用いたスギ挿し木在来品種シャカイン採穂園の効率的なクローン分析法
後藤 晋松井 由佳里
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2015 年 97 巻 5 号 p. 232-237

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抄録

採穂園における対象品種以外の個体の混入は, 苗木の品質上大きな問題である。採穂園のクローン分析には多型性の高いマイクロサテライトマーカーが有効であるが, 全個体からDNAを抽出し, 分析するには相当の労力とコストがかかる。本研究では, 熊本県の主要なスギ挿し木在来品種であるシャカインの採穂園を対象に, 効率的なクローン分析法の確立を試みた。まず, シャカインの針葉と別品種の針葉を 4 : 1 と 9 : 1 の割合で混合 (バルク) したサンプルを調整し, 抽出したバルク DNAを鋳型としてマイクロサテライト分析を行った。その結果, 別品種を含む全てのサンプルにおいて, シャカイン以外のピークが検出された。そこで, 最近造成されたシャカイン採穂園 A を構成する 387 個体と採穂園 B を構成する 1,007 個体にバルク分析法を適用した結果, A 採穂園では 21.1% に相当する 103 サンプル分, B 採穂園では 35.1% に相当する 353 サンプル分の分析で, 混入個体を同定することができた。以上の結果から, バルク DNA を用いたマイクロサテライト分析を行うことで, シャカイン採穂園の効率的なクローン分析が可能になると考えられた。

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© 2015 一般社団法人 日本森林学会
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