日本森林学会誌
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論文
愛知県海上の森におけるナラ枯れ被害林分の森林動態
渡辺 直登岡田 知也戸丸 信弘西村 尚之中川 弥智子
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2016 年 98 巻 6 号 p. 273-278

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抄録

ナラ枯れ被害林分の変化は,構成樹種の違いによって異なることが予想される。愛知県海上の森の三つの林分(発達した下層木を持つ林分,持たない林分,上層木にアラカシを交えた林分)における7年間の毎木調査の結果,ナラ枯れ被害は発生から5年の間で特に激しく,コナラとアベマキの死亡率は同程度であり,最終的には幹数にして両種ともに6割程度が枯死したことがわかった。これにより林分の胸高断面積合計は2割程度低下した。一方で,胸高直径(DBH) 5 cm 以上の上層木におけるタカノツメやヒサカキ,およびアラカシでは高い新規加入率を示し,ソヨゴやリョウブでは成長速度が速い期間が認められた。下層木(DBH 1 cm 以上5 cm 未満)でもタカノツメ,ヒサカキ,アラカシに加えてネズミモチやヤブツバキで高い新規加入率と成長速度が確認された。そのためナラ枯れ被害林分は,林相の違いによって,残存コナラが高木層をしばらくは維持しつつも亜高木層に落葉広葉樹が繁茂する,すぐには大きな変化はないものの将来的には高木層をほぼ欠いた低~中層に常緑広葉樹が繁茂する,もしくはアラカシが優占する林分へと移り変わっていくことが考えられた。

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© 2016 一般社団法人 日本森林学会
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