総合病院精神医学
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経験
神戸市立医療センター中央市民病院でのせん妄ケアチームの試み
伊藤 聡子伊藤 篤毛利 健太朗松石 邦隆川村 修司大音 三枝子新光 穣北村 登
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2012 年 24 巻 2 号 p. 146-154

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抄録

当院は,1次から3次救急を受け入れる地域の中核病院である。予備的調査では,当院入院患者の18.5%がせん妄を発症しており,他施設と同様の結果であった。また,インシデント事例でも転倒の半数がせん妄発症者であった。せん妄を発症すると,医療経営に重大な影響を及ぼすので,せん妄の早期発見,早期介入は重要なテーマである。そこで,2009年,多職種連携によるせん妄ケアチーム(delirium care team:DCT)を発足させたので,その活動報告と問題点, および今後の展望について報告する。活動目的は,「せん妄の発症予防」「早期介入による重症化の防止」で,精神科医,看護師,薬剤師,理学療法士を含めたチーム構成である。内容は,毎日回診を行い,各部署からせん妄予測患者・発症患者の相談を受け,薬剤調整を中心に,現状認知オリエンテーション,疼痛評価,患者・家族教育を行う。月1回のカンファレンスを行い,1年に1回はせん妄に関する勉強会を開催している。多くの部署で,すぐに相談できて安心という評価があり,多職種でせん妄患者に関わるというDCTの活動が,せん妄患者に関わる医療者の心理的負担を軽減している可能性がある。DCTが介入した患者は年々増加しており,2011年413人であった。2010年度に介入した患者の解析より,予防よりも重症化軽減のためチームに相談される結果がわかった。急性期病院という当院の特徴を考えると,毎日のDCT回診を行うことで,せん妄ケアに関わることに大きな意義があると考えられた。

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© 2012 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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