総合病院精神医学
Online ISSN : 2186-4810
Print ISSN : 0915-5872
ISSN-L : 0915-5872
24 巻 , 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集:ECTの新しい展開─パルス波導入10年を迎えて─
総説
  • 本橋 伸高
    2012 年 24 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    1938年にイタリアで開発された電気けいれん療法(electroconvulsive therapy:ECT)は方法の修正を加えられ,現在でも治療抵抗性精神障害の治療に用いられている。わが国ではECTの研究が早くから行われていたが,方法の改良はなかなか行われず,短パルス矩形波(パルス波)の治療器は2002年になって認可された。この治療器の導入により,修正型ECTが原則化され,ECTが技術として認められるようになった。さらに,ECTのイメージが改善し,ECTの研究が世界的に評価されるようになった。しかし,わが国では非修正型のECTが未だに行われており,安全で有効な治療法としてのECTを普及させる必要がある。
原著
総説
  • 上田 諭
    2012 年 24 巻 2 号 p. 118-126
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    パルス波ECTの施行では,「方法」がきわめて重要であるが,そのことがいまだ国内には浸透していない。サイン波の習慣にはなかった刺激用量を的確に設定し,発作脳波の有効性評価を行って次回の設定を行うことが必須である。「方法」を問わずに効果や有害事象を論じても意味は乏しい。有効な「方法」で不可欠なのは,1.脳波による発作の有効性判定,2.適切な刺激用量設定,3.発作抑制因子(麻酔薬,併用薬)への配慮,4.発作誘発のaugmentation(必要時)である。
    発作の有効性は発作持続時間では判定できない。典型的には,刺激用量を上げれば発作時間は短くなる。判定に重要なのは,規則的な対称性高振幅棘徐波と十分な発作時抑制,それに伴う交感神経系の興奮である。不適切な発作の場合は,次回に刺激用量を上げる必要がある。その際,臨床効果を得るには,両側性電極配置の場合,発作閾値の1.5〜2.5倍すなわち「治療閾値」を超える刺激用量が必要であるため,1.5倍の上げ幅が合理的である。しばしばみられる10%ずつ上げる用量設定や発作が長ければそれでよいという考え方は誤りである。辛うじて発作閾値を超えるような刺激用量では,効果がないばかりか,副交感神経優位による徐脈や遷延性・遅発性発作を生じかねない。逆に,初回から100%というような発作閾値を大きく超える刺激は認知障害を生じやすく,発作閾値を早期に上げてしまい,治療が失敗に終わりやすい。このほか,麻酔薬の種類・用量を考慮すること,併用薬としてベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤を一切避けることも必須である。どうしてもBZを使用する場合は拮抗薬のflumazenilの麻酔前投与を積極的に用いるべきである。
    ECTは精神科治療にとって必須の「最後の妙法」である。そのための重要な前提が,本論で述べた「方法」なのである。
原著
  • 竹林 実, 藤田 康孝, 柴崎 千代
    2012 年 24 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    ECTは,効果を有する精神科唯一の身体治療であり,切り札的な存在であるが,科学的な根拠に基づいた適用や運用が必要である。ECTのバイオマーカーについては今まで数多く検討されているが,臨床的基準に勝るマーカーは確立されていない。NIRS(near infrared spectroscopy:近赤外線分光法)は非侵襲的に脳血流を測定する手法であり,本邦でも先進医療として精神疾患の補助診断に利用できる手法として注目されている。
    今回われわれは,ECTのバイオマーカー開発に関して何らかの形でNIRSが応用できないか検討する目的で,ECT施行中のNIRSを用いた両側前頭葉血流の変化について,統合失調症と気分障害での比較検討を行った。その結果,両側ECTにより,両側前頭葉の脳血流が上昇する変化を示し,統合失調症においては左優位な左右非対称性の変化を認めたが,気分障害では認めなかった。この左右差は疾患特異的な現象であり,左右差の程度が臨床症状とは相関せず,統合失調症の罹病期間とのみ逆相関を示したことから,発病早期の統合失調症の指標となる可能性が考えられた。このことは,NIRSを用いたECTによる血流反応性の評価が,診断や状態像に応用できる可能性も秘めており今後の検討が必要である。
経験
  • 臼井 千恵, 八田 耕太郎, 中村 満, 鮫島 達夫, 土井 永史
    2012 年 24 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    ECTが薬物抵抗性のうつ病,統合失調症,緊張病性病像に有効であることはいうまでもない。それ以外に,精神疾患に限らず周辺領域においても,現時点の薬物療法が十分に期待できない病態は少なくない。したがって患者の苦痛を軽減しようと,さまざまな病態にさまざまな治療法が試みられてきた。神経因性疼痛や線維筋痛症,精神病症状を伴うパーキンソン病もそのような病態である。われわれは神経因性疼痛の代表格である,帯状疱疹後神経痛や開胸術後痛症候群に対するECTの有効性,線維筋痛症に対するECTの有効性,さらには精神病症状を伴うパーキンソン病に対するECTの効果について明らかにしてきた。本稿ではこれら新しい適応の可能性について,脳画像所見の変化も併せて示す。
一般投稿
原著
  • 庄 紀子, 生地 新
    2012 年 24 巻 2 号 p. 138-145
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    目的:1型糖尿病に罹患した青年期前期患者の摂食の問題,抑うつ傾向,解離傾向,自傷行為の経験を自己記入式質問票により調査し,その特徴を明らかにすることを目的とした。
    方法:神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科または北里大学小児科に通院中の10歳以上15歳以下の1型糖尿病患者を対象に無記名式の自己記入式質問票を用いて調査を実施した。34名中各24名から有効回答が得られその結果を分析した。対照群は横浜市内の小学5年〜中学3年生1,109名とした。
    結果:患者群は対照群よりも食行動調査表縮小版(EAT26)のカットオフ値を超えた者の割合が有意に高かった。EAT26の得点とBirleson小児期うつ病スケールの得点との間に有意な正の相関を認めた。
    結語:青年期前期の1型糖尿病患者は対照群と比べて摂食の問題を有する可能性が高いこと,抑うつ傾向が摂食の問題に関連することが示唆された。
経験
  • 伊藤 聡子, 伊藤 篤, 毛利 健太朗, 松石 邦隆, 川村 修司, 大音 三枝子, 新光 穣, 北村 登
    2012 年 24 巻 2 号 p. 146-154
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    当院は,1次から3次救急を受け入れる地域の中核病院である。予備的調査では,当院入院患者の18.5%がせん妄を発症しており,他施設と同様の結果であった。また,インシデント事例でも転倒の半数がせん妄発症者であった。せん妄を発症すると,医療経営に重大な影響を及ぼすので,せん妄の早期発見,早期介入は重要なテーマである。そこで,2009年,多職種連携によるせん妄ケアチーム(delirium care team:DCT)を発足させたので,その活動報告と問題点, および今後の展望について報告する。活動目的は,「せん妄の発症予防」「早期介入による重症化の防止」で,精神科医,看護師,薬剤師,理学療法士を含めたチーム構成である。内容は,毎日回診を行い,各部署からせん妄予測患者・発症患者の相談を受け,薬剤調整を中心に,現状認知オリエンテーション,疼痛評価,患者・家族教育を行う。月1回のカンファレンスを行い,1年に1回はせん妄に関する勉強会を開催している。多くの部署で,すぐに相談できて安心という評価があり,多職種でせん妄患者に関わるというDCTの活動が,せん妄患者に関わる医療者の心理的負担を軽減している可能性がある。DCTが介入した患者は年々増加しており,2011年413人であった。2010年度に介入した患者の解析より,予防よりも重症化軽減のためチームに相談される結果がわかった。急性期病院という当院の特徴を考えると,毎日のDCT回診を行うことで,せん妄ケアに関わることに大きな意義があると考えられた。
症例
  • 木村 哲也
    2012 年 24 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2012/04/15
    公開日: 2015/12/16
    ジャーナル フリー
    がんの終末期において治療的介入に抵抗し,自殺企図を認めた1例について報告し,終末期がん患者への精神療法的接近について考察した。本症例は,心理的な介入に対する抵抗感が強く,せん妄による意識障害の存在,十分な予後告知がなされない状況での治療などといったさまざまな要因のため,精神症状のコントロールがうまくいかず,対応に難渋した。しかし,治療者が患者の苦悩を重層的に深く理解しようと努め,変化してゆく精神症状や身体状況を正確に評価し,その時々で適切な支持的介入を粘り強く続けることによって,患者の精神症状は落ち着き,最期を迎えた。終末期医療において安定した治療構造の提供と,支持的精神療法を基盤とした深い理解を伴う共感的対応が,患者にとって支持的になると考えられた。
feedback
Top