小児期発症の疾患で治療が進歩し成人に達する患者が増加しており,てんかんでもキャリーオーバー問題がある。日本小児神経学会会員と日本神経学会会員に行ったアンケートでは,前者の回答者の95%がこの用語を知っていたが,後者の回答者は46%だった。前者が診療するてんかん患者の約27%は成人だった。それぞれの69%,78%が成人のてんかん診療に困難を感じていた。その理由は精神・心理的合併症と法律・制度が共通しており,前者では入院施設がないことや内科的合併症,後者では脳波判読やてんかん発作治療だった。成人科移行を妨げる要因は,前者では①近くに成人のてんかん専門医がいない,②患者や家族が転科を嫌がる,であり,後者では①小児期からの経過が把握しにくい,②小児期特有のてんかん症候群に不慣れ,だった。この問題解決のためにてんかんを診療する医師を増やし,各診療科の協力と関連学会の協同,さらに国民教育が必要である。