総合病院精神医学
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26 巻, 1 号
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特集:明日からの精神科臨床に活かせる『脳波とてんかん』
原著
  • 西田 拓司
    2014 年 26 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2017/05/03
    ジャーナル フリー

    てんかん発作は大脳の神経細胞の過剰あるいは同期性発射を病態生理とする。てんかんはてんかん発作を繰り返す慢性の疾患ないし症候群である。てんかんの診断では,てんかんか否か,てんかん発作型とてんかん症候群,そして合併症の診断が行われる。てんかんに共通する病態生理が神経細胞の電気的発射であることから,脳波検査は必須である。また,発作症状の詳細な問診が重要である。ビデオ脳波同時記録は,てんかん発作時の臨床症状と脳波所見を同期して得られる強力な診断ツールである。てんかん治療の基本は薬物治療である。てんかん発作型,てんかん症候群を考慮した薬剤選択が行われる。てんかんには身体・精神的合併症,心理社会的問題が伴うことが多く,てんかんのある人のQOLや日常・社会生活に大きな影響を及ぼす。てんかん治療では,これらの問題に対応する包括医療が行われるべきである。

経験
  • ―脳波所見は治療方針を劇的に変えることがある―
    谷口 豪, 澤田 欣吾, 渡辺 雅子, 成島 健二
    2014 年 26 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2017/05/03
    ジャーナル フリー

    総合病院における精神科臨床の現場においては,症状性精神病やせん妄などの意識障害を基盤とした精神症状に遭遇する機会が多いため,脳波を用いた意識障害の評価はきわめて重要である。しかしながら,わが国の若い世代の精神科医は脳波に対する苦手意識をもつことが多く,必ずしも適切に脳波を活用しているとは言い難い。結果として,脳波が治療方針の決定の過程において重要な役割を担っているという認識が乏しくなっている。そこで,本論文においては,筆者らが実際に経験した,脳波の判読が治療方針の決定に大きな役割を果たして効果的な治療に結びついた実際の症例を呈示することで,脳波検査のもつ重要性に対する注意を喚起した。わが国の若い世代の精神科医が,精神科医にとって歴史的に“付き合いの長い”脳波検査に親しみを感じ,興味をもって臨床の現場で有効に活用するための一助となれば幸いである。

総説
  • 福智 寿彦
    2014 年 26 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2017/05/03
    ジャーナル フリー

    てんかんを抱える患者や家族にとっては,発作症状以上にてんかんにより生じる社会的不利,生活や人生への影響が問題となることが多くある。そのため,薬物治療や外科的治療だけでなく,てんかん患者が抱える発作以外の問題にも注目し支援を行うことが必要である。てんかん患者の自立を支援するうえでは,患者自身の選択や意思決定を重視する姿勢を医療者が意識し,患者が障害に囚われず新しい人生の意義を発見するプロセスを指す「リカバリー」を治療目標とすることで,患者が自分らしい人生を送っていく支えとなるものと考えられる。地域社会におけるてんかんに対するスティグマの低減にもつながると考えられるため,その観点からもてんかん患者の社会参加支援は積極的に推し進めるべき課題としてとらえなければならない。本稿では,てんかん患者の社会参加と関係の深い自動車の運転免許の問題についても概観する。

総説
  • 渡辺 雅子, 渡辺 裕貴, 谷口 豪, 岡崎 光俊, 村田 佳子, 曽根 大地
    2014 年 26 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2017/05/03
    ジャーナル フリー

    小児期発症の疾患で治療が進歩し成人に達する患者が増加しており,てんかんでもキャリーオーバー問題がある。日本小児神経学会会員と日本神経学会会員に行ったアンケートでは,前者の回答者の95%がこの用語を知っていたが,後者の回答者は46%だった。前者が診療するてんかん患者の約27%は成人だった。それぞれの69%,78%が成人のてんかん診療に困難を感じていた。その理由は精神・心理的合併症と法律・制度が共通しており,前者では入院施設がないことや内科的合併症,後者では脳波判読やてんかん発作治療だった。成人科移行を妨げる要因は,前者では①近くに成人のてんかん専門医がいない,②患者や家族が転科を嫌がる,であり,後者では①小児期からの経過が把握しにくい,②小児期特有のてんかん症候群に不慣れ,だった。この問題解決のためにてんかんを診療する医師を増やし,各診療科の協力と関連学会の協同,さらに国民教育が必要である。

総説
  • ─気分障害と精神病性障害を中心に─
    山田 了士
    2014 年 26 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2017/05/03
    ジャーナル フリー

    てんかんのある人にはさまざまな精神症状が高頻度に合併し,彼らの生活の質に大きな悪影響をもたらすのみならず,てんかん治療医にとっても困難な問題となるものである。これらの精神症状は,発作との時間的関連やてんかん治療との関連で分けて考えることが臨床的に有用である。この総説では精神医学的合併症のうち,気分障害と精神病性障害を中心に臨床的特徴と治療について紹介する。精神科医は自身でてんかんの治療はしなくても,psycho-epileptologyとでも言うべき方法論をもって,てんかんの精神医学的問題に対して積極的な診療をしていくことが望まれる。

総説
  • 吉澤 門土, 千葉 茂
    2014 年 26 巻 1 号 p. 48-57
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2017/05/03
    ジャーナル フリー

    成人における睡眠障害は4〜5人に1人の頻度でみられる。てんかんでは,この約2〜3倍高い頻度で睡眠障害がみられると報告されている。本稿では,睡眠障害の国際分類・診断,てんかん患者にみられる睡眠障害,および,てんかん発作と睡眠障害の鑑別について概説する。てんかん患者では,不眠症や,過剰な日中の眠気,閉塞性睡眠時無呼吸症候群,睡眠時随伴症,睡眠関連運動障害などが合併しやすい。睡眠障害を合併したてんかん患者では,てんかんは睡眠障害をもたらし,睡眠障害はてんかんを悪化させるという相互促進的な関連性が存在すると考えられる。したがって,てんかんにおける睡眠障害を発見・治療することはてんかんの治療としても重要である。てんかんと睡眠障害の鑑別診断に際しては,背景にある病態生理を明らかにするために,ビデオ・睡眠ポリグラフィ(video-polysomnography;V-PSG)を施行できる医療機関との診療連携がきわめて重要である。

一般投稿
原著
  • ─大規模データベースを用いた身体・心理・社会的要因の包括的検討─
    清水 研, 中谷 直樹, 中谷 久美, 明智 龍男, 山田 祐, 藤森 麻衣子, 小川 朝生, 藤澤 大介, 後藤 功一, 津金 昌一郎, ...
    2014 年 26 巻 1 号 p. 58-68
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2017/05/03
    ジャーナル フリー

    背景:肺がん患者の抑うつについては,身体・心理・社会面に及ぶさまざまな関連要因の存在が既存の研究で報告されてきたが,いずれも小規模なサンプルの研究であり,関連要因の全体的な理解には至らなかった。今回われわれは大規模なデータベースを用いて,今までいわれてきたような要因を包括的に検討し,真に関連が強い要因を明らかにすることとした。方法:1,334名の肺がん患者を連続的にサンプルし,がん関連要因,個人要因,健康関連行動,身体症状,心理変数の5領域にわたる要因を調査した。これらの要因と,Hospital Anxiety and Depression scale for Depressionを用いて評価した抑うつの有無の関連を,多変量解析にて明らかにした。結果:対象となった患者のうち,165名(12.4%)に抑うつ症状を認めた。本モデルの説明率は(overall R2)は36.5%であった。特に心理要因の関与が大きく,神経症傾向が高いことと,コーピング様式のうちfighting spiritが低いこと,helplessness/hopelessnessおよびanxious preoccupationが高いことが抑うつと関連していた。一方で,がん関連要因,個人要因,健康関連行動,身体症状の寄与は相対的に低かった。結論:肺がん患者に合併する抑うつは,性格特性およびコーピング様式と密接に関連し,これらの要因をスクリーニングしてハイリスク群を同定する方法や,コーピングを変容させるような介入の有用性が示唆された。

症例
  • 臼杵 理人, 西 大輔, 松岡 豊
    2014 年 26 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2017/05/03
    ジャーナル フリー

    可逆性後頭葉白質脳症(posterior reversible encephalopathy syndrome:PRES)は高血圧,子癇,膠原病などの基礎疾患,化学療法剤や免疫抑制剤などの薬剤,移植,感染などが背景因子となって後頭部優位の血管原性脳浮腫を生じ,種々の神経学的症状および精神症状を呈する症候群である。今回われわれは,うつ病既往歴のある患者が意識障害を呈して入院となったが,臨床所見,頭部MRI所見などから,せん妄を伴った可逆性後頭葉白質脳症(PRES)と診断された症例を報告した。 せん妄に伴う精神運動興奮状態を認めたが,olanzapine投与と降圧剤の併用が奏効し,後遺症なく軽快した。総合病院で勤務する精神科医は,コンサルテーション・リエゾンの際に適切な情報を提供できるようにPRESの特徴について理解しておく必要がある。

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