背景:肺がん患者の抑うつについては,身体・心理・社会面に及ぶさまざまな関連要因の存在が既存の研究で報告されてきたが,いずれも小規模なサンプルの研究であり,関連要因の全体的な理解には至らなかった。今回われわれは大規模なデータベースを用いて,今までいわれてきたような要因を包括的に検討し,真に関連が強い要因を明らかにすることとした。方法:1,334名の肺がん患者を連続的にサンプルし,がん関連要因,個人要因,健康関連行動,身体症状,心理変数の5領域にわたる要因を調査した。これらの要因と,Hospital Anxiety and Depression scale for Depressionを用いて評価した抑うつの有無の関連を,多変量解析にて明らかにした。結果:対象となった患者のうち,165名(12.4%)に抑うつ症状を認めた。本モデルの説明率は(overall R2)は36.5%であった。特に心理要因の関与が大きく,神経症傾向が高いことと,コーピング様式のうちfighting spiritが低いこと,helplessness/hopelessnessおよびanxious preoccupationが高いことが抑うつと関連していた。一方で,がん関連要因,個人要因,健康関連行動,身体症状の寄与は相対的に低かった。結論:肺がん患者に合併する抑うつは,性格特性およびコーピング様式と密接に関連し,これらの要因をスクリーニングしてハイリスク群を同定する方法や,コーピングを変容させるような介入の有用性が示唆された。
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