総合病院精神医学
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経験
こころを使うということ
─精神分析家の視点─
藤山 直樹
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2016 年 28 巻 1 号 p. 16-22

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抄録
そもそも医療は治療関係を基礎に行われるが,精神科臨床ではその精神病理によって安定した協力関係を維持しにくい患者を相手にしているため,このことにとりわけ注意する必要がある。そうしたわけで,治療関係の構築と維持は精神科医の専門性の重要な要素であるが,日本の精神科医の訓練において,その側面が重視されてきたとは言い難い。
精神科実践も続けている精神分析家である筆者は,まず,精神分析実践が治療関係自体を治療のフォーカスにしていることを概説したうえで,精神分析が長年培ってきた知が,精神科臨床におけるよい治療関係に向けて有益な視点を供給する可能性があると主張する。具体的には,それは,1)設定に自覚的になること,2)自分のこころを使って患者を理解すること,3)気持ちを言葉で触れること,4)患者を歴史のあるひとりのパーソンとして見ていくこと,といった視点である。
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© 2016 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
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