2016 年 28 巻 2 号 p. 125-131
これまでのうつ病rTMS(repetitive transcranial magnetic stimulation)の臨床試験からわかることは,有効性の効果サイズが中等度であり,電気けいれん療法には有効性で劣るものの,安全性や忍容性において勝っているという点であろう。また,再発予防効果や維持療法としての有効性も徐々に検証されつつある。ただ,薬物治療に反応不十分な患者集団において,rTMSに反応する割合は3 〜4割といわれており,決して満足できる割合ではない。うつ病rTMSの対象集団を見極めて,治療アルゴリズムに配置することが重要である。rTMSの治療効果発現メカニズムについては仮説の域を出ないが,神経伝達物質,神経可塑性,マクロ的神経回路のレベルで概説した。また,うつ病以外の精神疾患に対してもrTMSの可能性が検証されつつあるため,それを紹介した。最後にうつ病rTMSの国内導入の概況と課題を解説した。