2019 年 31 巻 2 号 p. 184-192
本研究の目的は,がんに罹患した母親が病状について子どもに伝えた内容,伝え方とその後の母親の心理的健康との関連を明らかにすることであった。がん診断時に18歳未満の子どもがいた女性がん患者31名(48.03±5.46歳)に質問紙調査を実施した。その結果,不安,抑うつ,PTSSとの関連はみられなかったが,より多くの内容を伝えた母親は,より高いPTGを経験していた。また,治療に伴う副作用を伝えた者は抑うつが低く,病名や治療方法を伝えた者はPTGが高かった。研究デザインやサンプルサイズの限界のため,本研究結果から子どもに病気を伝えることが直接的に母親の心理的健康に影響を与えるかについては言及できないが,今後は,本研究での限界点をふまえ,臨床現場での活用可能性が高まるよう,より大規模なサンプルを対象とした調査を実施することにより,子どもの発達年齢や母親の心理状況を考慮した検討が可能となるだろう。