抄録
大腸癌は通常肝臓や肺への血行性転移が多く,所属外リンパ節への転移はまれである.今回,我々は初回手術後1年目に胃小彎リンパ節に孤立性転移を来した直腸癌症例を経験した.症例は68歳の男性で,2型の進行直腸癌に対して2010年10月直腸超低位前方切除術ならびに側方郭清を含めた3群リンパ節郭清を施行された.病理組織学的検査所見は腺扁平上皮癌,Rb,2型,30×30 mm,pA,pN2(11/38),sH0,sP0,sM0,Stage IIIbであった.術後CA19-9値が上昇してきたことより全身検索を行ったところ胃小彎リンパ節の腫大を認め,2012年3月開腹リンパ節摘出術を施行した.病理組織学的検査所見で扁平上皮成分を主体とする腫瘍細胞を認め直腸癌からの胃周囲リンパ節転移と診断された.補助化学療法はCapeOX療法を選択し,術後6か月の時点で再発兆候を認めていない.