2013 年 46 巻 4 号 p. 302-309
症例は80歳の女性で,下血を主訴として近医を受診した.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に易出血性病変を認めた.精査加療目的で当科に入院した.下部消化管検査を再検し,生検を行ったところ扁平上皮癌が疑われた.全身検索の結果,他臓器原発の病変は認められず,悪性腫瘍の既往もないことから,S状結腸原発扁平上皮癌の診断で手術を施行した.腫瘍の小腸浸潤を認め,S状結腸切除,小腸合併切除および人工肛門造設術を施行した.腫瘍内部には壊死による内腔形成があった.病理組織学的検査で一部に角化を認め,腺癌成分は認めず,扁平上皮癌と診断した.術後に局所再発が出現し,術後1年3か月で死亡した.大腸原発の悪性腫瘍は肛門管・下部直腸を除くと,そのほとんどが腺癌であり,結腸原発の扁平上皮癌は極めてまれである.文献的考察を加え報告する.