目的:胃上部早期癌に対する噴門側胃切除(proximal gastrectomy;以下,PGと略記)は,術後の逆流やそれに続く体重減少,QOLの低下が問題であり,胃全摘術(total gastrectomy;以下,TGと略記)との選択はいまだに見解が分かれる.PG後の観音開き再建法(double-flap technique;以下,DFTと略記)は術後逆流や縫合不全が低率であることが期待されており,TGと比較し有用性を検討した.方法:2014年1月~2016年12月までに胃上部早期癌に対し(L)PG+DFTを施行した19例と(L)TG+Roux-Y再建16例を比較し周術期合併症,術後内視鏡検査での逆流性食道炎の有無,栄養状態,骨格筋減少量の短期成績を検討した.結果:(L)PG+DFT群は(L)TG+Roux-Y群と比較し高齢であったが,縫合不全や膵液漏,術後膿瘍などの周術期合併症はなく,術後逆流性食道炎は有意に低率であった(P=0.0368).栄養面では,血清総蛋白量(TP),アルブミン値(Alb),血色素値(Hb)の推移に有意差はなかったが,1年後体重減少率(P=0.0165),骨格筋減少率(P=0.0345)は(L)PG+DFT群で有意に低かった.結語:胃上部早期癌に対する(L)PG+DFTは(L)TG+Roux-Y再建と比較し,術後逆流性食道炎の出現,栄養,骨格筋維持の面で優れている術式であった.(L)PG+DFTは術後QOL維持に寄与する術式と考えられる.