日本消化器外科学会雑誌
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原著
胃上部早期癌における噴門側胃切除術後の観音開き法再建のベネフィット
田中 侑哉磯邉 太郎藤田 文彦主藤 朝也加来 秀彰南 泰山村上 直孝青柳 慶史朗赤木 由人
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2019 年 52 巻 9 号 p. 494-503

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抄録

目的:胃上部早期癌に対する噴門側胃切除(proximal gastrectomy;以下,PGと略記)は,術後の逆流やそれに続く体重減少,QOLの低下が問題であり,胃全摘術(total gastrectomy;以下,TGと略記)との選択はいまだに見解が分かれる.PG後の観音開き再建法(double-flap technique;以下,DFTと略記)は術後逆流や縫合不全が低率であることが期待されており,TGと比較し有用性を検討した.方法:2014年1月~2016年12月までに胃上部早期癌に対し(L)PG+DFTを施行した19例と(L)TG+Roux-Y再建16例を比較し周術期合併症,術後内視鏡検査での逆流性食道炎の有無,栄養状態,骨格筋減少量の短期成績を検討した.結果:(L)PG+DFT群は(L)TG+Roux-Y群と比較し高齢であったが,縫合不全や膵液漏,術後膿瘍などの周術期合併症はなく,術後逆流性食道炎は有意に低率であった(P=0.0368).栄養面では,血清総蛋白量(TP),アルブミン値(Alb),血色素値(Hb)の推移に有意差はなかったが,1年後体重減少率(P=0.0165),骨格筋減少率(P=0.0345)は(L)PG+DFT群で有意に低かった.結語:胃上部早期癌に対する(L)PG+DFTは(L)TG+Roux-Y再建と比較し,術後逆流性食道炎の出現,栄養,骨格筋維持の面で優れている術式であった.(L)PG+DFTは術後QOL維持に寄与する術式と考えられる.

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