2020 年 53 巻 12 号 p. 968-975
症例は49歳の男性で,肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;以下,HCCと略記)に対して前医で経皮的ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation;以下,RFAと略記),および肝動脈化学塞栓療法を複数回施行されていた.経過中に黄疸(T-bil 16.2 mg/dl)および肝右葉に多発する腫瘤性病変を認め,精査加療目的に当科紹介となった.胸腹部造影CTにおいて,再発HCC以外に萎縮・変形した肝右葉は胆囊および横行結腸,十二指腸とともに右胸腔内に脱出し,横隔膜ヘルニアを認めた.また,肝内胆管拡張を認めたため閉塞性黄疸と診断し,内視鏡的経鼻胆道ドレナージにより減黄を行った.減黄後に右横隔膜ヘルニア,再発HCCに対して肝右葉切除術,ヘルニア修復術を同時施行した.RFA後に横隔膜ヘルニアを来し,閉塞性黄疸を来すほどの肝臓嵌頓は極めてまれである.