2002 年 12 巻 p. 43-63
e-ヘルスケアは、非同期通信と情報技術の利用による、ヘルスケアの提供、管理、ならびに消費者による医療情報への効果的なアクセスの向上を目的としている。本稿では、文献検索、ニュースリポート、企業情報を利用して米国におけるe-ヘルスケアの現状の「全体像」を描き出し、日本におけるe-ヘルスケアの導入の将来的な可能性を探った。情報技術によるヘルスケア管理機能の革新は、歴史的にみても重要な対象であった。その後、インターネットの利用は、新たなe-ヘルスのウェブサイトの急増につながった。現在、支払者、医療供給者、患者という3つの主要な関係者のすべてにおいてe-ヘルスのツールとしての利用が拡大しつつある。米国においてe-ヘルスが活発に展開されている領域には、e-visit(受診)、e-prescribing(処方)すなわち医師のコンピューターオーダー入力、e-disease management(疾病管理)の3分野がある。各領域で費用ならびに過誤の削減、および提供されるケアの効果の改善がみられている。日米の医療制度には類似点があるため、e-ヘルスのツールの利用から同様な便益が得られるものと思われる。第三者認証や政府規制など、アメリカで現在利用されている情報のセキュリティと質に関する懸念を解消するための方策は、日本における同様の懸念を軽減するものと思われる。