医療経済研究
Online ISSN : 2759-4017
Print ISSN : 1340-895X
投稿論文
老人医療における社会的入院の大きさについての統計的アプローチ
府川 哲夫
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 2 巻 p. 47-54

詳細
抄録

老人医療における受診者はきわめて多様であり、その中には入院治療の必要がなくなったにもかかわらず非医学的理由で入院している「社会的入院」も含まれている。老人医療レセプ卜・データを用いて、年間平均の1日当たり医療費が一定額(入院中の宿泊や食事に要する費用に相当する額、以下「基本料」と呼ぶ)以下の入院患者を「社会的入院」者と定義した場合の社会的入院の大きさを評価した。基本料の算出には長期入院者の1日当たり医療費(年間平均)を用いた。その結果、70歳以上人口の3~6.5%が社会的入院をしていると推測された。中間的なケースを例にとると、老人人口の4%、1年間に入院したことのある者の19%が社会的入院をしており、そのために要した費用は1年間の老人医療費のおよそ14%という結果になった。社会的入院は年齢階級の上昇とともに増え、同じ年齢階級では男より女の方に多く、また、入院日数の増加とともに急増した。社会的入院がなかったと仮定すると、老人人口1人当たり医療費の入院対入院外の比率は1.14対1から0.87対1に変化し、入院と入院外の大きさが逆転した。社会的入院の客観的定義は難しく、ここでの社会的入院の判定基準は最も限定的な評価方法の1つと考えられるが、入院期間の長さだけで社会的入院を判定する方法よりは優れているといえる。

著者関連情報
© 本論文著者

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top