2000 年 7 巻 p. 65-76
モラル・ハザードの程度、自己負担率引き上げ等の医療保険政策の影響を評価するに際して、需要の価格弾力性は、鍵になる指標である。本研究では、家計の医療サービス需要行動について実証分析を試みた。医療サービス需要は、自身の価格のみでなく、保健医療関連財や他の一般的な消費財の価格水準と関連するから、代替・補完の可能性を考慮して、医療サービスの需要行動を分析する必要がある。そこで本研究では、線形および対数線形の需要関数に加えて、Deaton-Muellbauer型の需要関数を推定している。また、実際に利用できるデータは不均衡にある非定常であるため、不均衡状態から均衡状態へ向かう調整過程を考慮した動的需要関数を推定した。わが国を対象とした研究では0.3程度の価格弾性値が測定されているが、本研究では線形需要関数で0.53、対数線形で0.59、動的AIDSで0.68という比較的大きな値が観察された。