抄録
目的:我々はアルコール性肝硬変と診断された症例に注目し,膵実質超音波像を検証するとともに,その所見がどの程度の頻度で認められるか検討した.対象と方法:2001年11月~2010年9月までに,臨床的あるいは病理学的にアルコール性肝硬変と診断された患者211名のうち,既に慢性膵炎と診断されている症例と膵描出不良例を除く189名 (男性175名,女性14名)を対象とした.平均年齢は61.1歳(32~90歳).評価はルーチン業務10年以上の経験をもつ超音波認定技師3名で行った.結果と考察:(1)膵実質エコー輝度が低エコーレベルである症例71.4%.(2)膵実質内に点状・線状の高エコーを有する症例95.2%.(3)膵辺縁輪郭に高エコーの縁取り様の所見を認める症例72.5%.上記(1)~(3)全ての所見を有する症例70.3%であった.慢性膵炎診断基準の定義では,膵内部の不規則な線維化,細胞浸潤,実質の脱落,肉芽組織などの慢性変化が生じるとされている.今回の検討で認められた特徴的な膵臓の超音波画像と上記のような膵内部慢性変化との因果関係が推察される.結論:体外式腹部超音波検査(以下,US)は簡便で非侵襲的であり,積極的に早期慢性膵炎の評価を行うべきであると思われた.