抄録
超音波プローブ走査をロボットに代行させることによる診断支援システムが注目されている.ロボットによる超音波検査が実現することで,より精密なプローブ位置決めが可能となるだけでなく,離島や無医村を対象とした遠隔超音波検査への応用,さらにはロボット単独による自動検査,未熟検査者へのトレーニング等が期待できるため,これまでも様々な部位を対象とした超音波診断支援ロボットが開発されている.本論文では,国内外で取り組まれている超音波診断支援ロボットについてまとめると共に,筆者が取り組んできたロボットについて述べる.本研究では患者のみならず医師・検査技師の肉体的・精神的負担を軽減する創発的医療支援ロボットシステムを実現することを目的としている.本論文ではまず,側臥位診断に対応可能なシリアルリンク型超音波診断・治療補助ロボットReDATについて述べる.次に,超音波診断において医師・検査技師が潜在的に持っているメンタルローテーション能力について評価する.熟練者特有のコツを解析しメンタルローテーション能力を定量的に示すことで未熟者の課題を示すことや検査者の負担軽減の支援へとつながる.次に,検査者がロボットと協調動作する際に,検査者の意図したプローブ走査の方向・大きさを計測する意図推定行列を提案し,算出実験を行った.これにより,ロボットと検査者の位置関係によらず,検査者のプローブ走査の意図の推定に成功した.